のりおの声

2015年4月

 桜の花も満開となり、新しい年度がスタートしました。
 子供の頃、うちは小さな商売をやっていたのですが、従業員の人達もみな揃って、宮川堤にお花見に出かけたのを思い出します。不思議なことに、家からどうやって宮川堤まで行ったのか、車のない時代のことですし、大人はもちろんお酒を飲むわけですから、バスで行ったのか、徒歩(で行くにはちょっと遠いですが)で行ったのか、今となってはいくら思い出そうとしても、全く思い出せません。とにかく、桜の花の下での大人共のどんちゃん騒ぎを不思議な気持ちで眺めていたのを思い出します。
 後年、自分が大人になってから、あの時の父や従業員のおじさん達と似たようなことをするようになって、初めて花見の楽しさを実感するようになりました。私の生まれ育った伊勢の地は温暖な気候の地域ですが、それでも冬が終わり、薄紅色の桜の花びらがハラハラと散る中で飲みかつ食いながら春を実感する喜びは他の季節では感じられない格別な思いがあります。
 もう一つついでに昔話をさせてもらいますと、これもまだ小学生だった頃、当時は普通の家庭でコーヒーを日常的に飲む習慣などなかった時代ですが、近所の駅の構内にコーヒースタンドがありました。時折、そう、月に一度くらいだったでしょうか。父親と連れ立って散歩に行くことがあったのですが、その時は必ずと言っていいほど、そのコーヒースタンドに立ち寄ったものでした。そして、母には内緒だぞと言いながら、父はコーヒーとドーナツをごちそうしてくれたものです。今から思うと小学生にコーヒーを飲ませるというのはいかがなものかと思いますが、私にしてみれば、あの田舎でコーヒーとドーナツという非日常の、しかも異国の飲み物、食べ物に接するという、ちょっとハイカラな誇らしい気分になり、高揚感を覚えたものです。あれも確か最初は春の日のことだったと思います。そして、その後の自分の人生であの時飲んだコーヒー、食べたドーナツ以上のものに未だに出会えていませんし、多分二度と出会うこともないでしょう。それでも、今でもたまに夢に見ることがあります。過ぎ去ったことや無くなったものはすべて美しいのかもしれません。
 という訳で、私にとっての春は、花見とコーヒーとドーナツが分かち難く結びついています。
 まだ日本が貧しかった頃、田舎で生まれて育った少年が、いかにも日本らしい花見の席で何を感じ、異国への憧れにも似た思いをコーヒーとドーナツに嗅ぎ取っていたあの頃が、懐かしくいとおしく思い出されてなりません。
 そういう時代もありました。
 思えば、日本も、はるばるとよくぞここまで来たものです。

2015年3月

 3月とは言え、まだまだ北国の皆さんは厳しい寒さや降り積もった雪と戦っておられると思いますが、心なしか頬に当たる風も少し春めいてきたような気がします。
 しかし、以前ほどではないにしても、この国にはそこはかとなく閉塞感が漂っているのはどうしてでしょうか。もちろん、一つには国家そのものの将来に対する漠然とした不安があるでしょう。膨大な借金を抱え、これから人口も減っていく、高齢化も益々進んでいく。いずれ大きな問題となって露呈してくるのではないか。それと同時に自分達の将来に対する不安もあるでしょう。また、東日本大震災からの復旧や福島の原発事故が終息しないことに対しても、苛立ちにも似た思いがあると思います。貧困や格差といったことにも以前より敏感になっているかもしれません。
 こうした様々な心配や不安が、多数の媒介手段を通じて拡散されていきます。
私はしかし、これといった根拠がある訳ではないのですが、そう心配しても始まらないのではないかと思っています。今のような状況に政治が対応できることには限度があります。ある程度成り行きに任せるということにも意味があるのではないかなとも思います。政治にできることは、またやらなければならないのは最低限、本当に困った人に手を差し伸べること、国家を破綻に追いやらないように手立てを尽くすことではないでしょうか。
 私は、今日の問題の多くはネット社会が生んだ弊害だと思っていますが、残念ながら、この流れはもはや誰にも止められないのではないでしょうか。みんなが自分が中心の世界に生きるようになってしまったような気がして仕方ありません。他人との距離感がうまく取れない人が増え、またそういう人が個性的とか思い切りがいいとかで持てはやされる時代になってしまいました。
 これを修正していくのは容易なことではありません。この大きな社会の変化に比べれば、財政再建やエネルギー問題など、これまでも歴史のどこかに現れた古い問題なのかもしれません。
 こうした状況を前提にした上で、この国をこれからどういう方向に舵取りをしていくのか、政治家の見識と胆力が問われることになります。
 高浜虚子が70歳を超えてから詠んだと言われている
   「春風や 闘志いだきて 丘に立つ」  

 負けずに頑張りたいと思います。

2015年2月

 おだやかな年明けかと思われたのもつかの間、遠く離れた異境の地で日本人二人が人質に取られた上に殺害されるという事件が起こりました。
 国会でも、この事件を巡り質疑が行われていますが、事実の検証や政府の対応についての評価はともかくとして、あるいはまた自己責任云々もひとまず措くとして、我々が自覚しないといけないのは日本人もテロと無縁ではいられないということではないでしょうか。
 アラブという地域は、我々日本人がなかなか理解しがたい地域です。西欧世界がまだはっきりとした国家としての枠組みが形成されていない時代に、今の中東から北アフリカ、そしてイベリア半島までに及ぶ大帝国を築いていました。文化的にもヨーロッパよりもはるかに進んだ状態だったと思います。
 今の中東地域は、第一次大戦後、オスマントルコの支配から解き放たれて、人為的に引かれた国境線によっていくつかの国に分けられました。専門家でもない私が推測のようなことを言うべきではないかもしれませんが、おそらくアラブの人達は、これまで西欧流のシステムで規定されてきた世界秩序に対する反発と昔日の大アラブ帝国のプライドがないまぜになって、今日のような状況が招来されたのではないでしょうか。もちろん、文化も宗教も違うわけですが、基本的にはイスラム教もユダヤ教もキリスト教も同じ神をいただいています。だからこそ、問題は余計に難しくなっているのかもしれません。ひるがえって、日本はこれらとは全く違うシステムで行動してきた。特に宗教に関しては、一神教ではなく、もっと緩やかな寛容な宗教観を持っているわけですから、彼らのシステムと直接対立しようがないのだと思います。だから、これまでは日本人は中東地域では好意的に扱われてきたのではないでしょうか。
 今度の事件は、こうしたアラブ対日本の関係に変化をもたらすきっかけになるかもしれません。どういう方向に行くのかは分かりませんが、少なくともこれまでより友好的な方向に行くとは思えません。しかし、テロはもちろん許すことはできませんが、全体として対中東で敵対的になる必要はないと思います。
 ただこれからは、冒頭にも書きましたように、政府も国民一人一人も、より注意深くならなければならないということです。
 こうした事件が起こると、日本の場合、往々にして極端な議論に流されてしまう傾向がありますが、ここは一つ頭を冷やして慎重な議論と対応が望まれます。特に、今後予定されている安保法制の議論においては、今回のような犯罪行為と安全保障をしっかりと区別して扱われるように注意を怠らないようにしていきたいと思っています。

2015年1月

 明けましておめでとうございます。
 遅くなりましたが、昨年末の総選挙におきましては、力強いご支援を賜り、おかげ様で無事5回目の当選を果たすことができました。改めて厚く御礼申し上げます。
 今回の選挙の結果、さらに安定した政権基盤が確立したわけですが、実は、経済も外交もあるいは安全保障やエネルギー問題等前途には多くの難問が待ち受けています。特に経済は、世界経済にも不安定要因が増しており、予断を許さない状況だと思います。欧州でのデフレ、アジアの足踏み、ロシアの苦境、少しマシなのはアメリカくらいでしょうか。日本も成長力が思ったほど回復していません。これは昨年の消費増税の影響もあるのでしょうが、根本的には需要が伸びない中で、経済が成長する可能性はあるのかということに行き着いてしまうのではないでしょうか。今より所得が上がれば、日本人はもっと沢山食べるのか、もっと住宅を手当てするのか、もっと車を買うのか、もっと電化製品を買うのか、もっと洋服や靴を買うのか。所得が上がれば、より質の高いものに買い替える可能性はあるでしょう。しかし、量の面ではもうそんなに消費は増えないかもしれません。周りを見渡してみても、どうしてもこれが欲しいというものがあまりないような気がします。悲観論を言っているのではなく、日本人全体にもうそこそこ物は揃っていると思っているのではないでしょうか。
 では、需要を増やすためにはどうすべきなのか。もっとも過激な方策は移民をどんどん受け入れることでしょう。しかしこれは副作用が大きいかもしれません。次に、外国からのお客さんを増やす。これは現に外国人観光客の増加で一定の効果が上がってきています。が、多少水モノ的な面があり、感染症やら災害やらのイベントリスク、さらには為替レートの変動などに大きく左右される可能性があります。長期的には、やはり日本の人口が増えなければならないのでしょうが、こればかりはすぐにはどうにもなりません。
 私自身は、前にも言ったかもしれませんが、日本はもうASEANの一員になるくらいの覚悟をした方がいいと思います。すぐに受け入れられるとは思いませんが、それくらい立場を鮮明にすべき時期にきているのではないでしょうか。経済的な利害だけでなく、日本が貢献できる分野はまだまだ沢山あると思いますし、また、経済的な結びつきの強い国どうしが相互に補完し合っていくことが、政治的な安定にもつながっていくのではないでしょうか。
 戦後70年を迎える今年、もう少しダイナミックに一歩前に踏み出すタイミングかもしれませんね。

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